東洋医学的解説
漢方では、リウマチは、抵抗力が落ちている時に 風(ふう)・寒(かん)・湿(しつ)・熱(ねつ)の邪気(じゃき)(体に悪影響を与える因子)を受けることで起こると考えます。
また、これらは組み合わさって「風寒湿邪」や「風熱湿邪」になることが多く、その中でも「風寒湿邪」がよく見られます。特に湿気の多いところに住んでいる場合は大きな影響を受けるため、予防と早めのケアが大切です。
【用語解説】
・寒・熱は字の通り、それぞれ冷たい・熱いイメージです。
・湿は、水分代謝がうまく出来ずに溜まってしまった余分な水分(代謝しきれない水分)のことを言います。湿度が高いときは汗の調節もスムーズにいかず、胃腸の機能も低下しやすいため、湿が溜まりやすくなります。
・風(ふう)は、自然界で見られる風(かぜ)の性質と同じイメージです。例えば、風(かぜ)が急に吹いたり止んだり舞い上がったりするように、風(ふう)も変化しやすい・動きやすいのが特徴です。
また、これは単独で症状を引き起こすというよりも、寒邪や熱邪、湿邪を引き連れて体に入り込む性質があるため、上記のように風寒湿邪や風熱湿邪となるのです。
- リウマチのメカニズム
漢方では、「通じざればすなわち痛む」といって、気血が流れなくなると痛みが出ると考えます。
リウマチも同じで、風寒湿邪や風熱湿邪が体に入り込み関節に留まると、そこの気血の流れが滞るために、痛み・腫れ・関節のこわばり・皮膚に斑ができる などの症状がでると考えます。
風寒湿邪によるもの
<原因>
湿気の多いところに住む・雨にぬれる・冷える・急激な気候変化・暑さと寒さが交互に現れる・梅雨時 などの影響で風寒湿の邪気が入り込み関節に留まると、そこの気血の流れが滞り、こわばり・痛みなどの症状が現れます。
<痛みの特徴>
風・寒・湿のなかでも、
風邪の影響が強い場合・・・痛む場所が移動する・発熱悪寒を伴うこともある など
寒邪の影響が強い場合・・・痛む場所は同じ・激しく痛む・冷えると悪化し、温めると楽になる・痛む場所に赤みや熱はない など
湿邪の影響が強い場合・・・痛む場所は同じ・手足や関節が重だるく痛む・しびれがある・腫れる など
<漢方>
風寒湿の邪を取り除くものや、邪を受けるもととなった体質(弱いところ)を改善していくものを使います。
風熱湿邪によるもの
<原因>
湿度が高く暑いところに住む・陰(いん)虚(きょ)体質(体を潤したり熱を冷ます力が弱い)で熱がこもっている・風寒湿邪が長く留まっている などが要因となります。
また風寒湿邪によるものと比べて、発病は比較的急で、発熱・口の渇き・そわそわ感 など全身の症状を伴い、病状が変化しやすいのが特徴です。
<痛みの特徴>
関節が赤く腫れて痛い・熱をもっている・冷やすと楽になる・触ると非常に痛い・一ヶ所~数ヶ所の関節に発症する など
<漢方>
熱を冷まし、風・湿の邪を取り除くものや、邪を受けるもととなった体質(弱いところ)を改善していくものを使います。
風寒湿邪や風熱湿邪によるものが慢性化すると、痰(たん。病理的な水分。余分な水分が凝縮されたもの。)が滞り、痛みが軽くなったり重くなったりする・関節が大きく腫れ、ひどい場合には変形する などの症状が現れます。
また抵抗力はさらに低下し、気血の流れが悪く新陳代謝も妨げられるため、気血が不足したり臓腑の機能が低下するなど、体全体への影響も出てきます。したがって、早めのケアと予防が大切です。
- リウマチの予防
邪気の侵入を防ぐことが重要です。そのためには、
体を丈夫にする。
湿度の高い場所を避ける。(住居)
寒暖の差、気候の変化に気をつける。
などが必要です。特に、
舌に苔がべたっとついている人、胃腸の弱い人は水分を代謝する力も弱くなっているため、湿度の高い時期は特に注意する。(水分の摂りすぎも注意)
冷えやすい人は、クーラーや冷たいもので冷やし過ぎないように気をつける。
など、自分の体質を把握して予防していくことも大切です。
西洋医学的解説
リウマチという言葉について
【広義】 関節が痛む病気の総称で、リウマチ性疾患と呼ばれます。
それぞれ、症状や治療方法、経過も異なります。
(例)
・免疫異常によるもの
関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群
・代謝異常によるもの
痛風
・運動器の変性によるもの
変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、五十肩
【狭義】 関節リウマチを指します。
一般的にリウマチというと、この関節リウマチを指すことが多いのですが、時折広義の意味で使われることもあります。今回はいわゆる関節リウマチについて解説していきます。
~関節リウマチ~
以前は、慢性関節リウマチとも呼ばれていたもので、関節が炎症を起こし、少しずつ破壊されていく病気です。
急激に痛みや発熱が現れるのはまれで、多くはゆっくり進行していくために、初めは気づかないこともあります。
- 関節リウマチのメカニズム
関節リウマチは、自己免疫疾患のひとつです。これは、本来体を守るはずの免疫機能が誤って、自分自身を攻撃してしまうものです。
しかし、なぜそのようになるのかについては、まだはっきりした原因はわかっていません。
関節リウマチは滑膜(かつまく)の炎症から始まります。滑膜は、関節を包んでいる関節包の内側にある薄い膜で、関節のすべりを良くしたり保護するための関節液を作り出すところでもあります。症状が進行するにつれて滑膜は徐々に厚くなり、関節腔(関節液のたまっているところ)に関節液が大量にたまり、膨らんだように腫れてきます。(水がたまる)
そしてさらに進行すると、軟骨や骨が破壊されてしまうため、関節が変形したり、骨どうしがくっついて動かなくなってしまいます。
- リウマチの自覚症状
最初は、朝のこわばり・関節の痛みと腫れなどが、手の指など小さな関節から始まり、徐々に大きな関節に広がっていきます。
症状は午前中に出やすく、昼過ぎに少し楽になり、夕方になるとまた出てきて、夜につらくなってくることが多いようです。(副腎皮質ホルモンの分泌と関係)
特につらいのは痛みで、関節を押すと痛い、じっとしていても痛い、関節を動かすと痛い、のようにさまざまな痛みがあります。また、天気が悪くなると痛む、冷えると痛むなども多く見られます。
リウマチの特徴として、次のような自覚症状が見られます。
・こわばり
特に朝、手を握ったり開いたりする動作が、こわばってやりにくい。
・関節の痛みや腫れ
指、手首、ひざ、肩など複数の関節に痛みや腫れがある。
関節が膨らんだように腫れて、指で押すと弾力があり、熱っぽく感じる。
・左右対称の痛みや腫れ
左右の同じ関節が腫れてくる。
・リウマチ結節(リウマトイド結節)
ひじ、ひざ、後頭部、かかと、指などに、数ミリ~数センチの固いしこりができる。
(発生率は全体の20%程度)
・全身症状(関節以外の症状)
体が熱っぽくてだるい、疲れやすい、体が重い、貧血、冷えやすい、紅斑(毛細血管の充血によって手のひらに赤い斑点ができる)など
※補足
リウマチの炎症が強いときは関節以外にも炎症が起こりやすく、次のような症状がみられることがあります。
目: 強膜炎・ブドウ膜炎
首・股: リンパ節の腫脹(しこりができて痛む)
肺: 熱が出る、咳や痰が出る、間質性肺炎、肺線維症、胸膜炎、結節
心臓: 心膜炎
胃・腸・膀胱など: アミロイド症
筋肉: 筋炎、萎縮
神経: 多発性神経炎
血管: 皮膚の潰瘍、壊死、炎症を起こしている血管とつながった臓器の機能低下 など
また、全身の臓器に炎症が起こっている状態は「悪性関節リウマチ」と診断され、薬物療法が主体となり、主にステロイド薬を使います。この発症率は1%以下と言われています。
手の指の関節でリウマチ症状が出やすい場所
リウマチは、手の関節によく発症します。その中でも、指の付け根・第二関節に多くみられ、第一関節(指の先端の関節)にはほとんどみられません。
- リウマチの経過
人によって状況は異なりますが、次のようなタイプに分けられます。
単周期型・・・一度症状はでるが、一定の期間を過ぎると症状が治まるタイプ
多周期型・・・症状が良くなったり悪くなったりするタイプ
進行型・・・・あまり良い時期が無く、急激に進行していくタイプ
この中には、悪性関節リウマチが含まれます。
しかし、新しい治療薬や治療法も出て、このタイプは少なくなっています。
- リウマチの関節の破壊度
ステージ1(初期)
滑膜が炎症を起こして増殖し始めた段階。滑膜が刺激されて関節液が増えて腫れてくる。
こわばりや痛み・熱っぽさも見られる。
まだ軟骨と骨は破壊されていないが、骨粗しょう症が見られることもある(骨萎縮)。
ステージ2(中程度)
滑膜が増殖し、肉芽が作られる。この一部はパンヌスという組織になり、軟骨を破壊し始める。
関節はまだ変形していない。
ステージ3(高度)
軟骨はほとんど無くなり、骨も破壊され始めた段階。
関節がうまくかみ合わなくなり、関節の変形・亜脱臼・脱臼が起こりやすくなる。
筋肉や腱の萎縮も見られる。
ステージ4(末期)
関節の骨どうしがくっついて全く動かなくなるか、骨と骨が離れてぶらぶらの状態になる。
- リウマチの検査
血液検査
・血沈(赤沈)・・・赤血球沈降速度。炎症の度合いをみます。貧血などでも大きくなります。
・CRP・・・C反応性たんぱく試験。炎症の度合いをみます。
・リウマチ因子(リウマトイド因子)・・・関節リウマチ患者でも20%は陰性で、肺・肝臓の病気の人や、健康な人でも陽性になることもあるため、この検査だけでは診断はつきません。
・血球数・・・白血球、赤血球、ヘモグロビン、血小板の数を調べます。炎症の度合い、貧血、薬の副作用などをみます。
・GOT/GPT・・・肝機能を調べます。
・血清クレアチニン・BUN・・・腎機能を調べます。
・MMP3・・・骨破壊の進み具合を予測します。
レントゲン検査
主に関節の骨の状態を調べます。
尿検査
腎機能を調べます。(薬の副作用などによる影響をみます。)
その他
CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像診断)、超音波(エコー)、内視鏡(関節鏡)などの検査を、必要に応じて行います。
検査は、進行の度合いを把握するためだけではなく、治療効果や薬の副作用をみるためのものでもあります。従って初回だけではなく、治療の途中も定期的に行っていきます。
- リウマチの診断
初期は、検査だけで診断をつけるのは難しく、他の病気でも似たような症状がでることもあるため(リウマチ性疾患参照)、医師が直接見て、触って診断することが重要になります。(診断:問診、視診、触診、聴診)
米国リウマチ学会の診断基準(世界共通)少なくても1時間以上、朝のこわばりがある。
- 3ヶ所以上の関節が腫れる。
- 手の関節のうち、少なくとも一つの関節が腫れる。
- 対称性の関節の腫れがある。
- レントゲン写真に変化がみられる。
- リウマチ結節がある。
- リウマチ因子(リウマトイド因子)が陽性
この7項目のうち、4項目以上当てはまる場合、関節リウマチと診断されます。
- リウマチの治療
リウマチの治療の目的は、寛解(かんかい)させることにあります。
つまり、進行を抑えて遅らせるということです。(痛みや炎症を抑える・関節の破壊を防ぐなど)
以前は薬も少なく、進行していくのをみているしかなかったリウマチですが、最近では薬も増え、治療法も進歩してきたため、かなり進行を遅らせ、機能障害を改善することができるようになっています。
- 基礎療法・・・大切なのは日常生活!!
普段の生活次第で、ある程度進行や悪化を防ぐことができます。
・寒さや冷えに気をつける。(温める)
冷えると痛みは強くなることが多いため、サポーターをつける・入浴するなどで温めると、筋肉もほぐれて楽になります。ただし、患部を冷やして楽になる場合は冷やします。
・積極的に体を動かす。
痛いからといって動かないでいると、筋肉も骨も弱ってしまいます。また筋肉は関節の負担を軽くする役割もあるため、積極的に動くことも機能障害(動かなくなること)を予防する上で非常に重要です。したがって、補助器具などを使って出来ることは、時間がかかっても自分で行うように心がけましょう。
ただし、状態に合わせた運動量ややり方もあるため、まずは専門の医師に相談しましょう。
・食事・・・鉄、カルシウム、たんぱく質をきちんと摂りましょう。
リウマチでは、貧血(ヘモグロビン量の低下)、骨粗しょう症、アルブミン(たんぱく質の一種)の低下がよく見られます。毎日の食事では、鉄分、カルシウム、たんぱく質を補うように心がけましょう。
・充分な睡眠
疲れが溜まると症状も出やすくなります。睡眠は充分にとりましょう。
・疲れたら休む
疲れたら昼寝をすることも大切です。
また疲れやすい時間帯があれば、それを医師に伝えておきましょう。
・精神を安定させる・・・プラス思考!!
ストレスでリウマチが発症したり悪化したという方も多く見受けられます。気持ちを落ち着かせて過ごすように心がけましょう。家族の協力も必要です。
リウマチでは自分に合った薬をみつけるのに、何度か薬を変えたり様子をみることもあります。長期的な治療にもなるため、医師ときちんと話をして信頼関係をつくることも大切です。
また、プラス思考の人の方がマイナス思考の人よりも良い変化が出やすいようです。笑うことで炎症に関与する物質が減ったという実験結果もあります。
痛みはつらいものですし不安もあるかと思いますが、趣味を持つなど気分転換を大切にして、意識をリウマチ以外のものに向けることも必要です。
意識を別に向けることの一つの例ですが、いつも痛い痛いと言っていた主婦が、家族が病気になった途端、今までリウマチのことばかり考えていたのが家族のことばかり考えるようになり、症状が落ち着いていったという例もあるようです。
- リハビリ
リハビリは、関節が曲げ伸ばしできる範囲(可動域)を保ち、関節を保護するための筋力をつけるために行います。ただし、炎症の激しい時期と落ち着いている時期など、状態に合わせたリハビリ方法・運動量があるため、詳しくは専門の医師に相談しましょう。自分流のリハビリは悪化させることもあるため、やめましょう。
- 薬物療法
・非ステロイド系抗炎症薬(NSAID、消炎鎮痛薬)
・抗リウマチ薬(DMARD)
・ステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬)
状態をみながらこれらを組み合わせて使っていきます。
状態は、時間・天気などによっても変わるので、日記も治療プランをたてるのに参考になることがあります。
注意したいのは、症状が落ち着いているからといって服用を勝手にやめないということです。
リウマチの薬の中には、急にやめると症状が悪化しやすいもの、効果が出るまでに(有効な濃度になるまでに)時間のかかるもの、やめた後もしばらく体内に残って効果が続くもの、やめてから再び飲み始めても効かなくなっているもの、などもあるからです。
ステロイド薬に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、医師は定期的に検査をすることで副作用なども確認しながら治療方針を立てています。また状態によっては使った方が良い場合や、長期ではなく一時的に使うこともあります。
しかし、どうしても不安があるならば、自己判断で中止せず医師にそのことを伝え、話し合って納得した上で治療方法を決めていくことも良いでしょう。
リウマチの治療は長期にわたるため、進み具合・効果だけでなく、副作用の度合いもみながら行っていきます。検査はそのためにも行うのですが、胃が痛い・食欲が出ない・かゆみがある・頭痛がするなど、検査では分からない症状がある場合には、そのことを医師に伝えましょう。
- 手術療法
【滑膜切除術】
薬では腫れや痛みを抑えきれない場合で、軟骨が充分に残っている時期(関節の破壊度ステージ1・2)に、主に、ひざ・肩・ひじ・手首・指の関節に行います。
【機能再建術】
関節の破壊度ステージ3の時期に行います。
・固定術
腱が伸びて骨がはずれやすくなっている関節や、あまり使わない関節を動かないようにくっつけて固定する手術。
・関節切除術
関節の端を切除して、動きをよくしたり変形を矯正する手術。
・人工関節置換術
壊れた関節を人工関節にする手術。
・腱再建術
腱が切れてしまった時につなげるための手術。
腱が切れると「ブチッ」という小さな音がして、力が入らずぶらぶらの状態になります。
切れた腱は時間が経つと縮んでしまうため、切れたら出来るだけ早く医師にみせましょう。
参考文献: | 「リウマチの痛みをとる本」内田詔爾著 講談社発行 |
「こんどこそ治る!関節リウマチ」浦山明俊・山内リカ著 朝日新聞社発行 | |
「家庭の医学」保健同人社 |
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