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東洋医学的解説

げっぷは、漢方では「あいき」と言い、気が胃の中から上がってくるために起こると考えます。
(胃気上逆(いきじょうぎゃく))

胃気は下に向かうことで正常な働きを維持していますが、胃気の流れを邪魔するものがあったり、胃そのものが弱っているなどして下に降りられないと、げっぷとして上がってきてしまうのです。

また漢方では、身体を5つに分けて捉えていく考え方(「五臓=肝・心・脾・肺・腎」)がありますが、その中で、げっぷは「脾(ひ)」「肝(かん)」が関与したものが多く見られます。「脾」は「胃」と協力して消化吸収を行っており、「肝」はそれを助けています。したがって、これら臓器の乱れはげっぷの原因となります。この他、「肺(はい)」の機能が弱っているなどしてでることもあります。
(五臓とは、漢方的に身体を5つに分けて捉えた機能的単位のことをいい、西洋医学でいう臓器とは異なります。)

「胃」と「脾」の関係

・「胃」は食べ物を受け入れて、もんで細かくし、「脾」はそれを吸収して運ぶ働きがあります。
・「胃気」の方向性は下:「胃」は残ったもの(かす)を下へ送ります。
「脾気」の方向性は上:「脾」は身体に必要なものを吸収し、それを上(心・肺)に運びます。
・「胃」は潤った状態を好み(燥を嫌う)、「脾」は乾いた状態を好みます(湿を嫌う)。

「胃」と「肝」の関係

「胃」の働きは「肝」の疎泄(そせつ)によって調節されています。
※疎泄(そせつ)とは・・・
機能を推し進める(気の流れをスムーズにする)働きのことをいい、感情のコントロールや胆汁の排泄などの意も含みます。

  • げっぷの原因
  • 食べすぎ(「食積(しょくせき)」)

食後に起こり、酸腐臭を伴うのが特徴です。食べ過ぎると、それが「胃」の働きを邪魔して気の流れが滞ってしまいます。(イメージ:洗濯機は、洗濯物をつめすぎるとその働きが十分にできなくなるのと同じ。)

<伴いやすい症状>
げっぷ
に酸腐臭を伴う、腹部膨満感と痛み、食欲減退、悪心・嘔吐、おなら(悪臭)、下痢便秘、ガス(げっぷやおなら)が出ると楽になる など。
これらの症状は食後急に起こります。

<漢方>
消化を助けるものなどを使います。

<予防>
・腹八分目にする。
・よく噛んで食べる。
・早食いしない。 など

  • ストレスなど(「肝気犯胃(かんきはんい)」)

「肝」は感情をコントロールし、ストレスを受け止めるクッションの働きをしています。したがって、ストレスなどによって「肝気」の流れが乱れ、それが「胃気」に影響して滞るとげっぷが起こります。(「肝」と「胃」のバランスの乱れ)

<伴いやすい症状>
上腹部の膨満感と痛み、胃の辺りがつかえる、食欲不振、悪心・嘔吐、ガス(げっぷやおなら)が出ると楽になる、便がすっきり出ない、便秘下痢を交互に繰り返す、イライラしやすい、憂うつになる、ため息が多い、胸や脇が張って痛い、生理の時に胸が張る、生理痛生理不順、のどに違和感がある など

<漢方>
気の流れを手助けし、「肝」と「胃」の関係を整えていくようなものなどを使います。

<予防>
・気分転換をする。
・ストレスを溜めない工夫をする。
イライラしない。  など
しかし、どうしてもストレスが溜まってしまう時もあります。そういった時は、漢方で予防していくこともできます。

  • 胃が弱っている(「胃気虚」)

「胃」の働き自体が弱いと「胃気」の下に降りる力も弱く、「肝気」の乱れの影響を受けやすくなります。(上記のストレス参照)
また「脾」の働きが弱った状態が同時に見られることも多く、これを「脾胃気虚(ひいききょ)」といいます。
「胃気虚」の原因としては、暴飲暴食・風邪をひくなど外邪(身体に悪影響を与える因子)の影響を受ける・脾気虚が胃に及ぶ(「脾胃気虚」) などがあります。

<伴いやすい症状>
少し食べただけで胃の辺りが張ってしまう(上腹部膨満感)、胃の辺りがつかえる、食べられない、少食、悪心・嘔吐疲れやすい、気力が出ない、息切れする、声に力がない、めまい、活動すると症状が悪化する など

<漢方>
「胃気」の下へ降りる働きを手助けしたり、「脾胃」を元気にしていくようなものなどを使います。

予防
・食べ過ぎに注意する。(暴飲暴食をしない)
・疲れを溜めない工夫をする。(十分な睡眠、規則正しい生活など)  など
「脾胃」は、身体をつくる気血のもとを取り入れる重要な臓腑です。食事を美味しく食べられなくなると、徐々に他にも影響が出てきます。
検査では何も問題がなくても症状があるような場合には、早めに漢方で予防していくことをおすすめします。

  • 脾や胃の中に熱がこもっている(「胃熱」や「湿熱」)

自然界において暖かい空気は上にあがるように、人間の体でも熱がこもるとその熱い空気は上に上がりやすくなります。
熱がこもりやすくなる原因としては、お酒や辛いもの、にんにくや生姜などの刺激物の過食、甘いものや油っこいもの、乳製品など消化の悪いものの過食、ストレス、食べすぎなどが挙げられます。
刺激物や温熱性の食べ物を食べたときにげっぷがひどくなりやすいのが特徴です。
甘いものやお酒、油っこいもの、乳製品は消化が悪く体内に滞りやすい性質のためこれらの食材を摂り過ぎると「湿熱」を作る原因となります。

<伴いやすい症状>
胸焼け、口内炎や口角炎、歯茎や喉がはれる、食べても食べてもお腹がすく、悪臭のある下痢または便秘、切れが悪くべっとりする便、悪臭のあるおなら、にきびができやすい、口臭、イライラ、など。

<漢方>
脾胃の熱を冷まし、胃腸の中をスッキリさせる漢方薬や健康食品で対応します。

<予防>
腹八分目、よく噛むこと
食べ過ぎや早食いは胃腸に負担をかけるため、脾胃の気虚を起こし、より体内に湿熱などの邪気を停滞させやすくなります。

葉っぱものの野菜をたっぷり食べる
体の中をスッキリさせる効果のあるキャベツなどの葉野菜をたっぷり摂る。

食事内容に気をつけるだけで体調にだいぶ変化が感じられると思います。
和食中心の生活をおすすめいたします。

西洋医学的解説

げっぷは、胃の中の空気を口から出すことで、おくびともいいます。健康な人でも、食後に2~3回は起こります。
胃の中に空気がたまると胃内圧が高まり、食道の下部括約筋が緩んで、げっぷとして出てきます。

  • げっぷに伴いやすい症状

胸やけ・胃もたれなど
胃酸や胆汁が食道へ逆流して胸やけが起こっている時では、胃の内圧が高くなっているため、げっぷも出やすくなります。

胃もたれしているときには、食べたものがいつまでも胃の中に残っているために胃の内圧も高くなりやすく、げっぷや胸やけを伴いやすくなります。

  • げっぷの原因

酸っぱいげっぷが出る場合は、胃酸過多が考えられます。

悪臭を帯びたげっぷの時には注意が必要です。悪臭は胃の中のものが腐敗・発酵しているためで、胃・十二指腸潰瘍や胃がんなどによって胃の出口が狭くなっている場合(幽門狭窄)にみられます。

げっぷが出る原因としては、具体的には次のようなものが挙げられます。

●健康な人でもげっぷが出やすくなる原因

・食事中や会話中に無意識に空気を飲み込む。
  早食いしたり、ガムをよく噛んだり、タバコを吸う人に多くみられます。
・胸やけを起こしやすい食べ物や飲み物を摂る。
  例)てんぷら、コーヒー、チョコレート、果汁、アルコール、炭酸飲料、玉ねぎ、香辛料など
・胃もたれしやすいもの(胃に長く残りやすいもの)を食べる。
  例)てんぷらなどの油っこいもの
・口をあけて眠る。   など

予防・・・これらの原因を避ける。

●何らかの疾患が原因となっている場合

・空気嚥下症(くうきえんげしょう)(呑気症(どんきしょう))

神経質な人やよく話をする人にみられます。

<症状>
げっぷを連発(食事とは無関係に無意識に空気を飲み込むため)、腹痛・腹部膨満感・鼓腸・腹鳴・おならが多い(腸内の空気が増加するため)など。ただし、睡眠中にはげっぷは起きません。

<原因>
心理的要因(抑うつなど)によるものが多い。
その他、食べ物をよく噛まずに飲み込むくせがある、よくため息をつく、唾液を飲み込むくせがある など

・慢性胃炎

<症状>
みぞおちの不快感・重圧感・痛み、悪心・嘔吐など。ただし、自覚症状に乏しいことも多い。

・胃・食道逆流症

<例>
逆流性食道炎・・・内視鏡検査で異常がみられる。
NUD・・・内視鏡検査で異常はみられないが、逆流症状がある。

<症状>
胸やけ、げっぷ、胃もたれ、食道のつかえ感、酸っぱいものがあがってくる など

<原因>
胃の手術、食道裂孔ヘルニア、胃酸過多、食道下部括約筋の働きの低下、胃排泄遅延 など
日常生活の中での原因としては、次のようなものがあります。
・アルコールの飲みすぎ
・高脂肪食、甘いものや刺激物(香辛料、カフェインなど)の摂り過ぎ
・暴飲暴食
・タバコ
・ストレス  など

<予防>
・禁酒、禁煙。
・胸やけを起こしやすい食べ物や飲み物を控える。(高脂肪食、甘いもの、香辛料、カフェイン、柑橘類)
・1回の食事の量を減らして回数を増やす。(暴飲暴食をしない。)
・寝る前に食べない。
・タバコを控える。
・ストレスを溜めない。
・夜は上体を高めにして休む。など

・食道裂孔ヘルニア(横隔膜ヘルニア)

食道は、横隔膜にある食道裂孔という孔(あな)を通って、胸腔から腹腔へとつながっており、食道と胃の境はちょうど横隔膜を抜けた腹腔の入り口あたりにあります。食道裂孔ヘルニアは、この孔が大きくなっているために胃がそこから胸腔の中へ飛び出してしまった状態をいい、逆流性食道炎の原因ともなります。

<症状>
胸やけ、胃の膨満感、ものが飲み込みにくい、熱く苦い液体がこみ上げてくる など。
ただし、自覚症状のないことも多い。

・過敏性腸症候群

空気嚥下症を伴うことも少なくありません。

<症状>
下痢便秘を交互に繰り返す、腹痛 など。

・神経性食思不振症(神経性食欲低下症、拒食症)

栄養補給や心理療法が必要なため、医師の診察を受けることが大切です。

<症状>
ほとんど食べていないのに、胸やけ・げっぷ・胃もたれなどが起こる。

・食道けいれん症

<症状>
精神的な興奮に伴って、ひどい胸やけ、げっぷ、飲み込みにくくなる、胸痛などを起こす。

<原因>
強い不安、恐怖、激怒など
(これらによって、神経が異常に興奮するためと考えられています。)

・胃・十二指腸潰瘍

<症状>
みぞおちの痛み(食後に痛む:胃潰瘍、空腹時に痛む:十二指腸潰瘍)、胸やけ、悪心・嘔吐、出血に伴う貧血、下血、吐血など

・胆石症
・胆のう炎
・食道がん
・胃がん
     など

●その他

・妊娠

<症状>
胸やけ、げっぷ、胃もたれなど

<原因>
妊娠4ヶ月まで
心理的な要因(イライラ、不安など)によるつわりが考えられます。
妊娠5~9ヶ月
胃が子宮によって圧迫されることによると考えられます。(逆流性食道炎と同じ状態)

<予防>
・胸やけを起こしやすい食品は摂らない。
・1回の食事の量を減らして回数を増やす。  など

<参考>
何となくみぞおちが張って気分が悪い(上腹部げっぷ・重圧感があるなど)というような症状を心窩部不快感といいます。さまざまな原因がありますが、内視鏡検査やX線撮影をしても潰瘍や胃炎、がんなどはみられないにもかかわらず、心窩部不快感を訴えることがあり、これをNUDと呼びます。NUDは、消化管の機能に異常があるためと考えられています。

NUDの分類としては、次のようなものがあります。

・運動不全型・・・最も多く見られるタイプ。特に中年女性に多い。
<症状>腹部げっぷ食欲不振・悪心・嘔吐などを伴う。
<原因>胃排出遅延など(いつまでも胃の中に食べ物が残っている)

・胃食道逆流型
<症状>胸やけ、げっぷなど
<原因>胃酸分泌の亢進、胃排出遅延

・潰瘍症状型
<症状>空腹時や夜間の上腹部の痛み、胸やけなど
<原因>胃酸分泌の亢進

・非特異型・・・上記以外のタイプ。
<症状>上記以外(症状がはっきりしない)
<原因>精神的な要因が大きい。

参考文献:「新赤本 家庭の医学」 保健同人社 2001年11月15日 改訂新版
 「今日の治療指針 2005」 医学書院
 「消化器と病気のしくみ」 黒瀬巌 著 日本実業出版社
 「新 家庭の医学」 時事通信社 2005年6月20日新版(第13次改訂版)
 「最新 家庭の医学百科」 主婦と生活社 2003年10月6日1刷発行
 「家庭医学館 ホームメディカ」 小学館 1999年3月1日初版第1刷発行
 「最新 家庭医学大百科 ホームドクター」 主婦の友社 2001年12月20日第1刷発行

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